土曜の夜に「あ~うたとい」と思ったのである。情けない、物憂い、面倒くさいという意味の この地の方言である。雨は降り続き 暑いのだか寒いのだかわからない季節感のない日々に 商店街を歩く人もなく もう際限なく「ウタテナイ」状況だったのである。
しかし この「うたて」は確か古文にあったぞ!と思い 新明解古語辞典を引っ張り出してみた。ありました!
(悪い方に)普通でなく なぜか格別に 次に嘆かわしい意味を伴って まずいことに 困ったことにの意。
「うたてし」は いやだ とか なげかわしい ということらしいけど。
串本弁の「うたとい」は 思いっきり「うっとうしい」ってことみたい。
「あな憂」と言えば「ああ いやだなあ」「ああ つらい」ということらしく 「事しあれば嘆かれぬ あなう世の中」
(何かあると まっさきについため息が出てしまう。ああ つらいなあ この世の中は)
「あな暗」は おやまあ真っ暗だ。「あな疾」は まあ早いことだ。その調子で「あな憂」「あな憂」と言っていると面白くなってきた。気が晴れたということか。
気分転換にはいいみたい。「串本地方の方言」という本と「新明解古語辞典」があれば うたて晴れ。