認知症になってしまった父のことは 何度も書いていた。
読み返してみると 二年前にはもう出ていたのだな。
昨年6月には ポロシャツにネクタイを締め 8月には
帽子と杖を忘れるようになった。
今は 鍵も 声をかけないと忘れる。
言葉も なかなか出てこない。
若い頃は タイガースのジュリーに少し似ていて男前だったのに
今 私の前にいる人は 見る影もなく 普通に年を取るのとは違う
うらぶれた姿だ。
83歳。体は元気なのに 胃腸も丈夫なのに 脳の病気は自分が
わからなくなるのが 怖い。
よぼよぼ とぼとぼ 毎日無表情で 自宅と店の間を行ったり来たり。
200メートルを二往復。
7年前に 広島から帰って来た頃は まだ色んな話ができたのに
ある日「おまえの言うことが わからない。」と言った。
それから 父は だんだん違う人になっていった。
認知症という病気は 人格を奪うのだ、と思う。
哀しいけれど よぼよぼ とぼとぼ 歩いている父の現実を
受け止めるしかない。